薬師如来は人々の病気を治す仏様。左手に宝珠や薬壺を持って、右手の薬指を前に出しています。
意味
読みは「やくしにょらい」。正式名称は薬師瑠璃光如来、略して薬師。
形姿
よくある形姿は次のとおりです。
大蓮華の上に座り、左手に宝珠か薬壺を持ち、右手に施無長の印を結んでいます。
次の薬師如来坐像は、大阪市北区天六にある国分寺(摂津国分寺)の本尊です。
右手に印を結んでいませんが、左手に薬壺を持っていることが確認できます。
キャリア
アドレス
東方浄土の浄瑠璃(瑠璃光)世界に住み、衆生の現世利益を司ります。
この点から、阿弥陀如来の西方浄土が来世の世界であるのと対照的な特徴をもっています。
ご利益
薬師如来は、釈迦の救済活動面を具体的に表現した如来です。
ご利益は病気治癒。世間・出世間に通じる妙薬を与えてくれます。
詳しい効能は十二大願に後述。
また、薬師如来を説く経典を読む者や信ずる者をも護ってくれます。
真言
おんころころせんだりまとうぎそわか
前半の「おんころころ」は小呪といわ れます。
サクセスストーリー
薬師如来は身心と物質的な苦悩を除いてくれるため、薬師如来への信仰はインドから西城・中国や日本へと盛行。
日本では持統天皇の病気平癒に発願された薬師寺をはじめ、主要寺院の本尊として造像されてきました。
これらのことから、薬師如来は奈良時代・平安時代をとおして遺作が最も多いわけです。
- 重病で死相の現われたとき、昼夜6時に礼拝供養し、49遍の経を読誦し、49燈を点じて49天の五色の彩幡を作れば意識を回復するという続命法
- 変死の九横死も薬師信仰で逃れるという徹底した現世利益
アイデンティティ
金剛界曼荼羅・胎蔵界曼荼羅に記載されていないため、薬師如来には諸説があります。
- 阿閦如来と同体説…東方に関連して阿閦如来と同体(根拠に乏しい)
- 釈迦如来と同体説…薬師の真言が無能勝明王の真言と同じ(本格的な理由にならず)。無能勝明王は釈迦の化身で、薬師と釈迦の印相が同じといわれますが、密教経軌には釈迦とともに形像の詳細が無いため、口伝に従って経軌に詳かでなければ釈迦仏に準じてしまいます。
- 大日如来・金輪仏頂・光仏頂などと同体説…(根拠に乏しい)
- 高野山金堂の本尊説…後世の俗説で、実際の本尊は阿閦如来。
このように、薬師如来のアイデンティティ(在り方)には諸説が混在します。
もともと、薬師如来は呪術的性格が強く、体系化しにくかったためです。
十二大願
- 相好具足…光明が普照し完全な姿とする
- 光明照被…身は瑠璃のように光明無辺で、意に従って成就させる
- 所求満足…智慧方便をもって総てを無尽にする
- 安立大乗…邪道を捨てて大乗に安住させる
- 持戒清浄…持戒を欠けることなく行なわせて悪趣に堕させない
- 諸根完具…不具の者も肉体的欠陥を除く
- 除病安楽…病気・貧窮多苦の者が名号を聞くことで治病し身心を安らかにする
- 転女成男…希望する女性には丈夫相(男)にして成仏させる
- 去邪趣正…煩悩で邪境魔境にある者を正見に戻して速かに菩提を得させる
- 息災離苦…国家権力や王権に苦しむ者の苦悩を解脱させる
- 飢渇飽満…飢渇のために諸悪業する者に食事を十分に与えて安楽に導く
- 荘具豊満…貧窮で衣服のない者に所用の衣服装具を与える
薬師経
5訳あります。
ふつう、玄奘訳の「薬師瑠璃光如来本願功徳経」1巻をさします。
他の3訳とともに薬師仏の功徳を強調するので、薬師随願経とも。
第5の義浄訳「薬師瑠璃光七仏本願功徳経」2巻は七仏薬師経といい七仏薬師を 詳述しています。
眷属
薬師如来の眷属には、どういう方々がいらっしゃるでしょうか。
脇侍
薬師如来の脇侍には日光菩薩と月光菩薩がいます(密教経軌による)。
たまに四天王を従えていることもあります。
薬師八大菩薩
薬師八菩薩曼荼羅に描かれている8菩薩。
薬師如来を中尊に次の菩薩群。
【文化遺産オンライン】阿弥陀八大菩薩像:高麗時代・14世紀、掛幅装・絹本着色
七仏薬師
七仏薬師は薬師如来の分身または別仏(本願説や尊容説もあり)。
キャラ
以下、簡単にリストアップします。
番号. 如来名:アドレス、大願、文化遺産オンラインの事例
- 善名称吉祥王如来:身体黄色・無威印、光勝世界、八大願
- 宝月智厳光音自在王如来:身体黄色・施妙印、妙宝世界、八大願、如来坐像
- 金色宝光妙行成就如来:身体黄色・説法印、円満香積世界、四大願、如来坐像
- 無憂最勝吉祥如来:身体紅色・三昧色、無憂世界、四大願、無憂最勝吉祥如来
- 法海雷音如来:身体白色・説法印、法幢世界、四大願、如来坐像
- 法海勝慧遊戲神通如来:白色青色・説法印、善住宝海世界、四大願、如来坐像
- 薬師琉璃光如来:身体青色・施妙印、浄琉璃世界、十二大願、薬師如来立像
1から6までの六仏が第7仏(薬師如来)の分身。
「北斗七星延命経」に、七星を七仏に配して本師を釈迦如来とする、とあります。
七仏薬師法
七仏薬師法とは山門四箇大法の一つ。
七仏薬師を本尊に、息災・増益を修する秘法です。
「薬師経」を本拠として、円仁や良源が修してから重んじられるようになりました。
大壇や護摩壇のほかに十二天・聖天・薬叉(夜叉)の壇を構え、等身の七仏薬師を本尊とします。
東密(真言密教)では七仏薬師法のほかは別に修しません。
台密では御修法の一つに選ばれています。
十二神将
特徴
十二神将とは薬師如来の眷属や分身とする守護神で、十二大願を護持するともいわれています。
別名に十二夜叉神将・十二神王・十二薬叉大将など。読みは「じゅうにしんしょう」とも。
昼夜12時間、年季12か月にわたり絶えず衆生を守ってくれます。
さらに、薬師本願経によると、それぞれが7000もの眷属を従えていて、薬師の名号をもつ衆生を守ります。
名称や持ち物は経軌によってさまざま。
リスト
- 宮毘羅
- 伐折羅
- 迷企羅
- 安底羅
- 摩尼羅
- 珊底羅
- 因達羅
- 波夷羅
- 摩虎羅
- 真達羅
- 招杜羅
- 毘羯羅
文化財
【文化遺産オンライン】覚井 木造薬師三尊像及び木造十二神将立像:慶薫作、熊本県、室町時代末期・1532、錦町大字一武字小川1421番地、錦町指定、指定年月日:2016年3月1日、有形文化財(美術工芸品)
- 木造十二神将立像:慶円作、南北朝期、木造。岸和田市指定、指定年月日:2014年5月1日、有形文化財(美術工芸品)。→文化遺産オンライン
- 木造十二神将立像:鎌倉時代・14世紀、木製、石川県小松市指定、指定年月日:2015年11月3日、有形文化財(美術工芸品)→文化遺産オンライン
霊場
大阪市の仏寺を含む薬師如来の霊場めぐりは次のとおりです。
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