意味
毘沙門天とは仏教ヒエラルキーの天部に属する仏尊で、四天王・十二天の一つ。
散支大将の兄。
- 音写:吠室曜末拏羅門・靴沙門。また、Kuveraからの音写として倶吠・金毘羅。
- 訳語:多聞・普聞・遍聞・種々聞・不好身
- 異名:拘毘羅毘沙門、多聞天
- 三昧耶形:宝棒・塔
キャリア
アドレス
金剛界曼荼羅の外院の二十天(西方)、胎蔵界曼荼羅の最外院(北方)。
展開
ベーダ時代からの神で、闇黒界の悪霊の長から財宝・福徳を司る神に転属。
その後も夜叉・羅刹の統領として、帝釈天に属して北方守護の善神を担当しました。
仏教に入っても護法神。
夜叉の主領として、八大薬叉の大将。
(大日経疏)、二十八使者の眷属(多聞天儀軌)を歴任。
役割・御利益
中国にて
唐・玄宗時代に外冦に対して不空三蔵の霊現がありました。
これを受け、勝軍のために祈願します。
また、五太子がありました(大方等大集経巻52・毘沙門天王品による)。
日本にて
日本でも単独に早くから信仰されました。
信貴山朝護孫子寺の申子・楠木正成の幼名を多聞丸といいます。
また、平安京鎮護として北方の鞍馬寺に、左手をかざして俯瞰する肥満像があります(北方守護)。
のち、武装したまま七福神に加えられ、いまでも民間信仰が篤いです。
形姿
腹部に天邪鬼の鬼面を帯びています。
船にて
胎蔵界曼荼羅では円座に(金剛界曼荼羅では荷葉座)に坐します。
甲冑を着けて、右手に宝棒、左手に宝塔を持っています。
持物は宝剣・三股戟の経軌が多く、まれに2〜3悪鬼を踏んで、宝華を持つ2天女が侍るのもあります。
多聞天儀軌にて
身体に七宝金剛荘厳甲冑を着け、左手に三叉戟を所持し、右手は腰に当てて脚下に3夜叉鬼(中央が地天か歓喜天、左は尼藍婆、右は昆藍婆)を踏んでいます。
双身毘沙門天
台密の説による、毘沙門天の一異形。
吉祥天と合体の姿で理智冥合を表現しています。
本拠はなく、吉祥天も男相で、2尊は背を合せた忿怒形、身体は赤色で三目。
甲冑を着て、毘沙門天は合掌を下に向けて独鈷杵を、吉祥天は上向け合掌のなかに輪を持って一円座上に立っています。
兜跋毘沙門天
毘沙門天の一異形。
兜跋は吐魯蕃(トルファン)の転訛で、唐代に西蕃の来寇のさいに出現しました。
古来の伝説とともに王城鎮護の目的から、城門に安置されることが多く、唐代の作品が東寺(京都市)に存在。
これはかつて、羅城門に置かれていたものです。
左手に宝塔、右手に宝棒か三股戟を所持。
胴部には緊窄した鎧を着用し、三面立の宝冠を戴いて、地天の両手や、左右の悪鬼を踏んで直立。
胴部の鎧は金鎖甲といい、外套式の甲冑(寒国風)で、手首まで覆う胡風。
同形の遺作が数点あり。
このほか、棲霞寺や善水寺などの諸像が有名です。
文化財
大阪市指定文化財
大阪市指定文化財に登録されている毘沙門天像があります。
- 木造毘沙門天立像…浄土宗正念寺(大阪市天王寺区)
- 木造毘沙門天立像…浄土宗極楽寺(大阪市住吉区)
- 木造毘沙門天立像…黄檗宗東大寺(大阪市住吉区)
- 毘沙門天王立像(本尊秘仏)…大乗坊(大阪市浪速区)
日本国重要文化財
- 木造兜跋毘沙門天立像…浄土宗妙香院(大阪市北区)
- 絹本著色毘沙門天像…中之島香雪美術館(大阪市北区)
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