意味
普賢延命菩薩とは、ゾウに乗って延命を修する仏尊のことです。
- 異名:逼知院・大安楽不空真実金剛
- 密号:真実金剛
- 三昧耶形:甲冑・五鈷杵
キャリア
ゾウに乗って延命を手助けしてくれます。
普賢菩薩が増益延命の三昧に住するときに、別物として仏尊に崇められてきました。
「普賢延命法」(後述)の本尊で、とくに台密(天台密教)は四大法の一つとして重視しました。
形姿
二臂像
「普賢延命法」(後述)本尊の形姿。
満月童子形に似ていて五仏冠を頂きます。
右手に金剛杵、左手に金剛鈴を持ち、千葉蓮華座に坐っています。
その下には、ゾウが一身三頭で鼻に独鈷杵を巻き、四足が大金輪を踏んでいます。
各大金輪の下に5000もの象が支え、四天王が仕えています。
二十臂像
「胎蔵現図曼荼羅」の像で、「普賢延命法」の本尊でもあります。
身体は金色で五智宝冠で、蓮華座に坐します。
持物は十六大護と四摂菩薩の三昧耶形で表わされます。
持ち物リストは次のとおりです(括弧内は略称)。
右手
- 五鈷杵(薩埵)
- 五鈷鉤(王)
- 箭(愛)
- 弾指(喜)
- 三郷宝珠(宝)
- 日輪(光)
- 如意幢(幢)
- 二の三鈷杵(笑)
- 金剛鉤(鉤)
- 金剛索(索)
左手
異像
宝華座の下に4匹の白ゾウが外に向いて立ち、象の頭上に四天王が立っています。
この像は金剛界曼荼羅の三十七尊が延命の三摩地に入ることを表現したものです。
文化財
仏画
松尾寺(京都府舞鶴市)に絹本着色の国宝があります。
- 絹本著色普賢延命像
- 絵画
- 平安時代
- 1幅
- 国宝指定年月日:1952年11月22日
- 所有者:松尾寺
- 国宝・重要文化財(美術品)
儀軌を忠実に描き出しています。
複雑な三頭一身の象が大金輪に四肢を踏んで、その金輪を5000の小象が支えいて、これを細かく表現。
光背の金銅板透刻には銀の截金文様。
4匹のゾウが蓮台を支える二十臂像図に、持光寺(広島県)、高野山正智院(和歌山県)、醍醐寺(京都府)、龍乗院(高知県)など。
彫像
法隆寺金堂(奈良県)、常覚寺(奈良県)に平安時代の木彫があります。
龍田寺(佐賀県)には4匹のゾウつきの鎌倉時代の仏像があります(康俊作)。
普賢延命法
「普賢延命菩薩」を本尊として、増益・長寿のために修する法。
- 金剛寿命陀羅尼念誦法
- 金剛寿命陀羅尼経法
- 仏說一切諸如来心光明加持普賢菩薩延命金剛最勝陀羅尼経
などに依拠。
台密(天台密教)での扱い
台密(天台密教)では四箇大法の一つとして重視。
1075年に法性院座主覚尋が白河天皇の勅命で修してから盛んに行じられました。
東密(真言密教)での扱い
東密(真言密教)では1099年に宜秋門院の御産祈願に覚成法務が修法しました。
御産祈願には「金剛寿命陀羅尼念誦法」を、長寿延命には「金剛寿命陀羅尼経法」を本拠とします。
悪業の因縁によって短命の者でも、この陀羅尼を誦する功徳によって業障が消滅し、寿命が延びると説いています。
大壇を中心に護摩壇と四天王・十二天・聖天などの壇を並置する大法で行じます。
細部には流儀の相違あり。
普賢延命曼荼羅
経軌の本拠は不明ですが、四箇大法として尊重されます。
二臂像は延命法、二十臂像(胎蔵界現図曼荼羅には大ゾウがいません)は普賢延命法の本尊です。
前唐院本
四段に並び、本尊のほか、釈迦如来、不動明王、降三世明王、八供養菩薩(内外四供養菩薩)、第一段に釈迦如来、第三段左右に二明王のほかは、内外供養菩薩(八供養菩薩)の位置が規定どおり。
大原伝
方形三重式で、2種とも内院・第二院に、八供養菩薩・四摂菩薩、外院に八方天を並べています。
内院四方をみると、「金剛寿命陀羅尼念誦法」は、「金剛界曼荼羅」の降三世明王と東輪四親近の王菩薩・愛菩薩・喜菩薩に反していて、「金剛寿命陀羅尼経法」は、「胎蔵界曼荼羅」遍知院の仏眼菩薩・大勇猛菩薩・毘倶胝菩薩と降三世明王を配置しています。
コメント お気軽に♬