意味
略して「心経秘鍵」「秘鍵」。
現在用いる冠字「仏説摩訶」の冠は誰が付けたか不明です。
キャリア
一般的な注釈書
注釈書は新旧ともたくさんあります。
密教では秘鍵の精神で解釈するため、顕教的見解とは趣きを異にします。
古くから「般若心経」は、簡略な文の中に深遠な般若思想を盛る意味で古来から僧俗に信仰されてきました。
顕密諸家の注釈書も多く、諸法皆空の理を要約したものとして一般的に注釈しています。
空海の注釈書
これに対し、空海は、壮大な諸法皆空ではなく、般若菩薩にポイントを絞った解釈をしました。
具体的には、「陀羅尼集」経巻3の「般若波羅蜜多大心大乗理越六波羅蜜多経」(10巻・般若訳)、「修習般若波羅蜜菩薩観行念誦儀軌」(不空訳)などから、大般若菩薩の内証三味を説きました。
構成
構成
構成は、最初に帰敬・発起・大綱・大意の4序を置き、次に題目の解釈を終わってから本論に移ります。
本論
5段に分かれています。
人法総通分
因・行・証・入・ 時。
分別諸乗分
建・絶・相・二・一 。
普賢菩薩(華厳)・文殊菩薩(三論)・弥勒菩薩(法相)・声聞緑覚(小乗教)・観自在菩薩 (天台宗)の内証法門を説きます。
行人得益分
人に7法(声聞・縁覚・法相・三論・天台・華厳・真言)を4点(因・行・証・入)に分けて説きます。
総帰持明分
名・体・用に分け、また4種の呪を声聞・縁覚・大乗・秘密乗に該当すると解釈します。
秘密真言分
呪を5つに分けて、諸乗の菩提証入の意義を説くなど、つねに十住心の思想が芽生えています。
最後に陀羅尼は密教の対象に説き、顕教の般若心経も、密教眼で見ると密経となるとして流通分を終えます。
ポイント
鳩摩羅什訳の存在
本書が注釈した般若心経は、ほとんど玄奘訳に一致します。
しかし、諸説を説明した本として鳩摩羅什訳を空海が挙げている点に、疑問が残ります。
冠字「仏説」の有無
経典については「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」とする諸本はありません。
いま一般にこの題名を唱えているのは真言宗に多く、空海の影響の大きいことがわかります。
著作時期
般若心経秘鍵の著作時期に2説があり、確証はありません。
- 後人が付加した上表文には818年
- 先人口伝には834年、南都東大寺南院で製作
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