光背(後光)とは如来や菩薩の光明を象徴して仏像の背後に立てたもの。
ここでは頭光(眉間光)と挙身光に分けて光背の種類や日本でのパターンを説明しています。
また、光背で有名な仏像、阿弥陀如来及両脇侍像(伝橘夫人念持仏、法隆寺)と不空羂索観音立像(東大寺三月堂本尊)もご紹介。
意味
光背(後光)とは、如来や菩薩の光明を象徴して仏像の背後に立てたものです。
頭光と身光とに大別しますが、身光だけというのが存在しないため、頭光と身光をふくむものを挙身光といいます。
種類
頭光(眉間光)
頭光は、如来と菩薩の白毫から発生します。
白毫とはオデコの真ん中のぽっちょのことです。眉間から出る光明なので、頭光を眉間光ともいいます。
白毫から出た頭光を、東洋絵画(仏教絵画)では、側面図でも円く描きます。
なお、キリスト教絵画は彫刻の写実なので、薄い円板を頭の後に置いた様に描きます。
すでに、古代インドの仏像に美しい模様のある円光が付けられています。
頭光とは円光です。
円輪に装飾を加えて、蓮華の周囲を幾重にも区切って、忍冬文・宝相華文・連珠文・連弧文を浮彫にした美術品があります。
千体仏・化仏・薬師十二神将・三十七尊曼荼羅を表現したり(小彫像を着ける)、種子・宝塔など加えるデザインもあります。
輪光
細い輪。
密教輸入後、仏像が複雑になるにつれて単純な輪光が人気(一例に浄瑠璃寺の辯才天)。
宝珠光
円周の火焔が上昇した定形。
飛鳥時代・天平時代(7世紀後半から8世紀末まで)に流行しました。
放射光(筋光)
光の筋道を表現した細い棒。
傘後光
仏教のシンボルである輪宝や、その周囲についた火焔。傘光ともいいます。
輪宝や羯磨輪に火焰を加えたデザインが、不動明王などの天部によく使われました。
挙身光
身光だけの光背が存在しないため、頭光と身光をふくむものを挙身光といいます。
ですから、仏尊の身体全体を包んでいます。
二重円光
頭光と身光とを単連結した形式。
大小の円を上下に重ねた光背です。
舟形光
一枚の光背で仏尊の全身を覆う形式。
上部の尖った縦長の火焰のなかに頭光と身光を区別した光背です。
火焰、水紋唐草、千体仏などの部分に、天人・迦陵頻迦・梵字化仏などをつけて荘厳を増すことがあります。
不動明王の火焔光は、迦楼羅(金翅鳥)状にすることが儀軌に書いてあり、日本の不動図にはこれが多いです。また、火焔の形を迦楼羅の頭の形にしたのを迦楼羅炎といいます。
アジャンタ石窟
いずれのタイプも古代インドのアジャンタ窟で発見されました。
日本のパターン
日本では宝珠光が全身に伸びた舟形光が普通になりました。
舟形の中に頭光と身光を組合せ、その周辺に装飾を加えるパターンが多くみられます。
主なパターンは次の具合です。
- 飛光…火焰や雲・飛天のショールで形づくる
- 唐草光…唐草で形成する
文化財
光背のデザインが自由なのは天平彫刻でした。
銅造阿弥陀如来及両脇侍像(伝橘夫人念持仏)
これは、法隆寺像の小さい阿弥陀三尊像。
蓮池から出た蓮華の茎に乗り、後には三尊共通で屏風式の飛天の浮彫の後扉を立てています。
両端の狭い袖は蝶番で動きます。
中央上部には大きく中尊(阿弥陀如来)用の光背を付けています。八葉蓮華の肉は網目、外郭は忍冬唐草の透彫で、外縁には点々と火焰が付いています。
不空羂索観音立像(東大寺三月堂本尊)
これは、東大寺法華堂(三月堂)にある本尊・不空羂索観音立像です。
頭光は二重円で中心に八葉蓮華文。
尖った長楕円形の身光を組合せています。
身光の外側には等間隔に4条の曲線が囲んで、外の三枠には宝相華文の透彫の飾りが交互に並んでいます。
身光からは長短48本の細線を直線に放射して光明を表現。
全体が透彫の感を与えるデザインになっています。
儀軌には光背の細部までは言及していないから、工夫を凝らしやすい部分。
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