意味
位牌(霊牌)とは籍を意味し、死者の霊を祭るために戒名(法名)を記す板です。
仏教でいう位牌は、儒教の木主・神主・木牌、神道の霊代神牌にあたります。
もともと、後漢時代(2・3世紀)ごろの儒教では、長さ10~40cmの板に存命中の官位や姓名などを記して神霊に託させる習慣がありました。
この習慣を仏教が転用し、日本へは禅宗にともなって伝わり、江戸時代に一般化しました。
日本の習俗とシンプル化
日本では15世紀中頃に行誉が撰述した「塵添檻鈔」巻十六に記載されています。
「位牌と云ふ事、禅家に好く用ゐる儀歟、正道の古所に無き事なりと云へり。先代の中比より早やありけるにや」とあり、「太平記」を例にあげています。
16世紀には「諸回向清規」巻第四に、臨済宗の在家の位牌について書式が成文化されています。
これらのことから、日本でお位牌を使う習俗は16世紀からはじまり、江戸時代に入って広く習慣になったと思われます。
近世以降、浄土真宗をのぞく各宗旨宗派所属の家々では、仏壇には仏像よりも位牌を重視して祀り、位牌は死者の象徴として礼拝対象となってきました。
檀家から預った位牌を寺院で合祀して読経供養する堂を祠堂や位牌堂といいます。最近では、本堂の脇壇に寄託された位牌を伺って位牌堂ということもあります。
そもそも位牌とは籍を意味し、亡き人の官位や戒名を記録したものです。
そのうえ、日本では祖先崇拝の思想と関係が深く、仏寺の位牌壇におさめたり、各家屋の仏壇に安置したりして、礼拝供養します。仏壇供養のついでに位牌供養をすることも多く見られます。
他方、最近では法事がシンプル化して、供養や法要のときに遺影ともども位牌を置かないケースが増えています。
種類
対象
順修牌と逆修牌にわかれます。
- 順修牌…亡くなった人のために作ったもので、ふつう、位牌とよんでいるのはこちら。
- 逆修牌…生きている人があらかじめ戒名・法名をつけてもらうこと。逆修とは予修ともいって、逆は迎える・予めの意味。
戒名と法号
- 戒名…授戒によって付与
- 法号…戒を受けない
葬儀にさいし与えられるのは法号です。
いわば法号とは、葬儀で亡者に与えられる死後の名称。
逆修
死後の名称を生前に受けるときは逆修法号といいます。
逆修牌とは、生前に予め浄土往生に資したり、菩提功徳を修したりするために、とくに願いでて住職から与えてもらうことが多いです。
夫婦のケース
夫婦のうち一方が欠けたとき、位牌・墓に二人一緒に戒名や法号を書いて、生存している方を朱色で書くことがあります。
また、夫婦がともに故人の場合に二人一緒に同じ位牌に書くこともあります。
このように生存中に作って安置供養する位牌を寿牌、生前に作っておく墓を寿陵・寿塔といいます。朱色を入れておくからです。
形状
位牌のサイズや形状はいろいろ。
高さは10cm 台や 20cm 台が定番です。
蓮台のついたものが多く、屋根や扉を付したものもあります。
塗色
死亡時には白木を用い、のちに黒塗・朱塗・金箔塗などのものに造りかえることが多いです。
文字
位牌の文字には、楷書彫り・楷書書き・行書彫り・行書書きが基本。
最近では、グローバル時代を反映して、英字彫り・英字書きをしてくれる仏具屋さんが増えています。
書き方
一般的な書き方は次のとおりです。
- 表面:戒名(法名)、没年月日
- 裏面:俗名、年齢など
戒名の上には円寂・帰真・帰元など、いろんな置字があり、密教系では諸仏の種子を書いて、諸仏に霊が救われた意味を現わすことも。
起源
儒教説
位牌は中国の儒教からの影響が強いです。
もともと儒家では、祖先や両親の存命中の位官・姓名を四〇センチほどの栗木に書いて神霊に托させる風習がありました。
これらの栗木を位板・木主・神主・虞主といいます。
この風習を宋時代の禅僧が援用し、仏教に定着しました。
プロト神道説
位牌の原形を神祭や魂祭に用いた上代の霊よりしろ代(神や霊の依代)に求めるのが民俗学者の説です。
まとめ
両説が習合したものが日本の位牌のはじまりでしょう。
神道で神主が用いているような笏の形と儒家の位板の形とが習合して塔形になり、さまざまな形状の位牌を生みだしていったとみるのが無難です。
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