魚籃観音は、観音菩薩の三十三応現身の一つで、中国の伝説に由来します。美しい乙女の姿で魚の入った竹籠を持ち、衆生を救済します。起源は唐代の馬郎婦伝承で、魚売りの美女が観音の化身として人々を導きました。ご利益は豊漁や海上安全、商売繁盛、女性守護などです。慈悲と豊穣の象徴として信仰されています。

魚籃観音。国訳秘密儀軌編纂局編『新纂仏像図鑑』地之巻、仏教珍籍刊行会、1932年、175頁。
効用
魚籃観音のご利益は、主に海や水に関わるものです。古くから大漁祈願として漁師たちに信仰されています。魚を入れた竹籠の姿から、豊かな収穫を願う人々が祈りを捧げます。また、海上安全を祈る船乗りや、海運業に従事する人々にも人気です。事故や嵐から守ってくれると信じられています。
さらに、商売繁盛の効用もあります。水商売や市場関係者が多く参拝します。魚籃のイメージが豊かさと繁栄を象徴するため、ビジネスでの成功を願うのに適しています。旅行安全や交通安全も祈願されます。現代では、車や電車の安全を願う人も少なくありません。
女性守護の面も強く、美しい乙女の姿から、女性の健康や美容、縁結びを祈る方がいます。子授けや安産の願いも込められます。全体として、慈悲深く癒しの力を持つ観音として、幅広い人々に支持されています。
これらの効用は、観音菩薩の普門品に基づき、衆生の苦しみに応じて現れる姿です。日常の悩みから大きな災難まで、さまざまな場面で頼りにされます。信仰する人々は、心の平穏を得られるでしょう。
形姿
魚籃観音の典型的な形姿は、美しい乙女の姿です。頭髪を唐様の髷に結び、優雅な雰囲気を漂わせます。右手に魚の入った竹籠を持ち、左手に裾を少し引き上げています。この裾の仕草は、下に隠れた金の瓔珞を示すもので、観音の化身であることを表します。
衣装は天衣をまとい、柔らかな布地が体に沿うように描かれます。顔立ちは穏やかで慈悲に満ち、目元や口元に優しさが感じられます。時には大魚に乗った姿も見られ、力強さを加えます。中国由来の像では、白衣や装飾が華やかです。
彫刻や絵画では、細やかな表現が特徴です。木造やブロンズ像では、髪の流れや籠の質感がリアルに彫られます。絵では、着色の技法で気品を強調します。この姿は、観音の三十三身の一つとして、女性身で衆生を救う形です。
全体のバランスが美しく、静かな佇まいが印象的です。寺院の安置像では、周囲の空間に溶け込むように配置されます。参拝者はその優美さに心を奪われます。
変形として、魚を抱えた大観音像もあります。高さ数十メートルのものもあり、壮大です。これらは風景に溶け込み、守護の象徴となります。
意味
魚籃観音の意味は、観音菩薩の慈悲と救済にあります。魚籠は、苦しむ衆生をすくい上げる網や籠の象徴です。中国の伝説で、魚売りの美女が人々を仏教に導いた物語が基です。この化身は、日常の姿で現れ、誰にでも近づきやすいことを示します。
豊穣と財福の意味も込められます。魚は豊かな収穫を表し、海や川の恵みを象徴します。癒しの力もあり、心の傷を癒す存在です。特に女性の守護として、母性や優しさを体現します。
仏教の教えでは、観音は音を観じて救う菩薩です。魚籃の姿は、水辺の衆生に寄り添う形です。普門品の「婦女身」で現れる記述に基づき、多様な変化を表します。
文化的には、東アジアの海域世界で広まりました。漁業や貿易の守護として、経済的な意味も加わります。日本では、江戸期に像が流通し、民間信仰に根付きました。
現代の意味は、心の支えです。自然災害や日常の不安から守るシンボルとして、信仰が続きます。芸術的価値も高く、美の象徴です。
所蔵(大阪市内)
大阪市内では、大阪中之島美術館が魚籃観音関連の作品を所蔵しています。東郷青児の油彩画「魚籃観音」が代表的です。1962年の作品で、117.5×73.9cmのキャンバスに描かれ、優雅な姿が表現されています。展覧会で公開されることがあります。
また、香雪美術館の中国絵画コレクションに、伝銭舜挙の「魚籃観音図」があります。明時代正徳8年(1513)の賛入りで、重要文化財です。中之島フェスティバルタワー・ウエスト4階に位置し、企画展で観覧可能です。
大阪中之島美術館の特別展「日本美術の鉱脈」では、《魚籃観音像》が展示されました。高村光雲の木造像も関連し、明治期の作品です。これらは大阪の美術文化を象徴します。
正木美術館にも関連作品があり、仏画として魚籃観音が含まれる場合があります。大阪市北区中之島周辺が主な所蔵地です。訪れる際は展覧会情報を確認してください。
所蔵(全国)
全国的に魚籃観音の像や絵が多く所蔵されています。東京国立博物館には、中国・徳化窯の「魚籃観音菩薩立像」があります。磁器製で、優美な姿が特徴です。常設展や企画展で公開されます。
SOMPO美術館に東郷青児の「魚籃観音」絵画があります。1962年作で、油彩キャンバスです。横浜美術館には下村観山の絹本着色軸「魚籃観音」があり、1924年(大正13)作です。140.0×50.0cmのサイズです。
長浜市の己高閣・世代閣に木造魚籃観音立像が収蔵されています。重要文化財の十一面観音立像とともに、多数の仏像があります。滋賀県の観音の里として知られます。
岩手県の釜石大観音は、高さ48.5mのブロンズ像です。魚を抱えた珍しい姿で、展望台もあります。長崎県の生月大魚籃観音は、高さ18mのブロンズ像で、漁港を見下ろします。
三重県の桑名市指定文化財に木造魚籃観音立像があります。江戸時代前期作で、総高36cmです。千葉県松戸市の鋳造魚藍観音立像は、中国由来の像で、像高24.5cmです。
山形県の絹本著色魚籃観音花鳥図は、章経筆の傑作です。3幅あり、清楚な姿が描かれます。熊本県立美術館に福田太華の魚籃観音図があります。江戸後期作です。
京都の東京国立博物館収蔵の模本類にも、狩野派の魚籃観音図があります。全国の寺院では、浄土宗魚籃寺(東京港区)や清岸寺(東京渋谷区)に安置されています。焼津市の常照寺にも小さな像があります。
これらの所蔵は、魚籃観音の人気を示します。訪れる際は、各施設の開館情報を確認してください。信仰と芸術の両面で価値が高いです。
また、中国江蘇省にある蘇州西園の戒憧律寺本殿(大雄宝殿)の魚籃観音が有名です。
ギャラリー

三十三観音の一つ魚籃観音。真言宗勝鬘院愛染堂(大阪市天王寺区)にて2023年9月1日に撮影。

三十三観音の一つ魚籃観音。真言宗勝鬘院愛染堂(大阪市天王寺区)にて2023年9月1日に撮影。


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