意味
不空羂索観音とは観音菩薩の変化形(変化観音)の一つで、六観音にも数えられています。
羂索とは漁猟具(網と綱)のこと。詳しくは羂索。
網や綱を張りめぐらせる意味から、不空羂索観音の役割は、煩悩生死の世界に仕掛けて漏らさず(不空の状態で)済度することになります。
不空状態で救済してくれることから、御利益が20種類にも広がり、古く奈良時代には信仰が広まっていました。
異名は鹿皮衣観音、不空王観音。密号は等引金剛。
三昧耶形は、網索(羂索)・開蓮華(聖観音の未敷蓮華の因位に対して果位)。
キャリア
大悲願の表観音としての成立は早く、「不空羂索神変」真言30巻(菩提流志訳)の厖大で詳細な儀軌があります。
役割・御利益
この陀羅尼を誦すると20種の御利益を得られます。
- 無病
- 身体細妙
- 衆人愛敬
- 六根常定財宝自然
- 財害回避
- 水火難回避
- 飢餓回避
- 不堕死
- 苗稼滋茂
- 不戦死
- 鬼神害回避
- 衆人称誉
- 讐が和らぐ
- 悪人に謗られない
- 恐怖心なし
- 呪詛着かず
- 諸悪煩悩ひとりでに消滅
- 刀や箭と毒害を受けず
- 天常に保護
- 毎日が慈悲と喜捨に満つ
奈良時代の信仰
日本でも早くから信仰され、奈良時代の名作が多くあります。
東大寺法華堂、東大寺乾漆造本尊、広隆寺講堂の木造立像など。
形姿・文化財
形像の種類がたくさんあります。
国宝
- 乾漆不空羂索観音立像:奈良時代、東大寺(奈良県奈良市)
- 木造不空羂索観音立像:平安時代、広隆寺(京都市右京区)
- 木造不空羂索観音坐像:鎌倉時代、興福寺(奈良県奈良市)
重要文化財
- 木造不空羂索観音立像:奈良時代、大安寺(奈良県奈良市)
- 木造不空羂索観音坐像:鎌倉時代、東鳴川観音講(奈良県奈良市)
- 木造不空羂索観音坐像:鎌倉時代、不空院(奈良県奈良市)
- 木造伝獅子吼菩薩立像:奈良時代、唐招提寺(奈良県奈良市)
- 木造伝衆宝王菩薩立像:奈良時代、唐招提寺(奈良県奈良市)
- 木造不空羂索観音坐像:平安時代、法蓮寺(香川県三豊市)
- 木造不空羂索観音立像:鎌倉時代、観世音寺(福岡県太宰府市)
重要文化財の絵画
- 絹本著色不空羂索観音像:鎌倉時代、教王護国寺(京都市南区)
イラスト
不空羂索経
不空羂索経は、不空羂索観音の本軌。
漢訳
- 不空羂索神変真言径30巻:菩提流志訳…最も完備し、不空羂索観音法の典拠にも。
- 不空羂索呪経:闍那崛多訳
- 不空羂索神呪心経:玄奘訳
- 不空羂索心経:菩提流志訳
- 不空羂索陀羅尼経:李無諂訳
- 不空羂索陀羅尼自在天呪3巻:宝思惟訳
- 仏説不空羂索陀羅尼軌経2巻:阿目佉訳
- 仏説聖観自在菩薩不空王秘密心陀羅尼経:施護等訳
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